環境トピックス

  

太陽光発電 官民で強化策

― 世界シェア1/3超に ―

経済産業省は民間企業と共同で日本の太陽光発電産業の競争力強化に向けた総合対策をまとめた。太陽電池の原材料であるシリコンの安定調達に向け、政府系金融機関による融資などを活用。家庭で余った太陽光による電力を電力会社が現在の二倍で買い取る制度も創設する。普及促進などを通じ現在は世界の四分の一となっている日本の太陽電池の生産シェアを2020年に三分の一超に引き上げたい考えだ。(中略)

日本企業は世界に先駆けて太陽電池を事業化。00年代前半は世界の生産シェアの半分程度を占めたが、足元は欧米や中国のメーカーの追い上げが急だ。

世界の太陽電池生産量が07年で3,733メガワットと2年前に比べ2倍以上に増えるなか、日本企業のシェアは首位ながらも全体のほぼ四分の一に落ち込んだ。

報告書では、太陽光発電の普及促進を図る具体策を提示。全量を中国などからの輸入に頼る太陽電池パネルの原材料である金属シリコンについて、安定調達に向けて日本政策金融公庫の国際部門である国際協力銀行を通じた融資や、日本貿易保険の貿易保険を活用し、企業の事業リスクの一部を国が負担することを検討する。

一方で、設置済みの太陽光パネルが老朽化すれば、大量の廃棄物が発生する。官民が協力して、シリコンなどを再利用できる工場や仕組みもつくる方向だ。(中略)

これらの施策によって20年には日本企業の太陽電池の生産シェアを世界の三分の一超に高める目標を設定。現在の国内市場規模は1兆円、雇用は1万2千人程度だが、目標を達成すれば、経済効果は最大で10兆円、雇用規模は11万人になると試算している。

(H21,3,18 日経)


素材、CO2排出1割減

― 相次ぐ減産が影響 ―

国内素材産業の二酸化炭素(CO2)排出量が減少している。各企業の減産で、鉄鋼、化学など主要5業種の2008年度の排出量は前年度比約1割減となり、3千4百万トン分が減る見通し。これは07年度実績から京都議定書の目標水準までの削減必要量のおよそ3割に相当する。景気変動で生産量が増減しやすい素材産業の動向次第で、国全体の排出量が左右される構図が浮き彫りになった。

CO2排出量は生産量とほぼ比例することを前提に、鉄鋼、化学、石油、製紙、セメントの5業種について、業界団体による生産見通しなどから日本経済新聞が試算した。5業種の08年度の排出量は前年度より3千4百万トン超少ない3憶2千5百万トン程度となる見通し。(中略)

家庭なども含めた国内の温暖化ガス排出総量をみると、07年度は四分の一を素材5業種が占めている。素材産業の生産動向が日本全体の排出量に与える影響は大きい。

京都議定書は08年度から5年間の平均の温暖化ガス排出量(CO2換算)を90年度実績比6%減の11億8千6百万トンとする目標を日本に課している。森林の吸収分や政府の排出枠購入分とは別に、対象期間中に07年度実績に比べて1憶1千7百万トン分を減らす必要がある。5業種の08年度の減少幅はこの約3割に当たる。

09年度も各業種の生産見通しなどから試算すると、07年度比で5千7百万トン分の削減が見込まれる。5業種の減少だけで、07年度時点の超過分の半分がまかなえる計算となる。

日本は今後、低迷している原子力発電所の稼働率向上によるCO2削減も見込む。国内原発の設備稼働率は07年度は60.7%だった。06年度の69.9%に戻れば、3千6百万トン分が削減できるとみられる。過去最高だった98年度の稼働率は84.2%だった。

(H21.3.3 日経)


リサイクル停滞に危機感

― アルミスクラップ流通急減 ―

アルミスクラップの取引が急減している。景気悪化に伴う自動車部品向けなどの需要減の影響が広がっているためだ。スクラップから二次合金に再生するメーカー、自動車部品などに加工するメーカーの各段階での在庫調整も流通量の減少に追い打ちをかける。問屋の経営悪化が進み、リサイクルが行き詰るとの危機感も出ている。(中略)

合金協会のまとめたアルミスクラップ国内購入量(合金も含む)は、昨年12月に3万5千7百80トンと直近のピークだった7月の6万2千2百86トンから43%減少した。ロシア産などの輸入原料地金の入荷が続いているのも圧迫要因となり、年明けはさらに激減しているもようだ。

アルミスクラップ価格(アルミ新の問屋買値)は東京で1トン3万6千〜4万1千円。年明け以降40%下落した。基準となるアルミ地金の国内価格は年初から12%下落したが、それ以上に需要不振が響いて大幅な値下がりとねっている。(後略)

(H21.2.24 日経)


廃棄物リサイクル参入

― 日本パルプ商事 熊本に処理施設 ―

紙代理店最大手の日本紙パルプ商事は廃棄物から再生樹脂や固形燃料を製造・販売するリサイクル事業に参入する。熊本市内の回収業者と共同で40億円を投じて中間処理施設を建設し、2010年春に稼働させる。不況や少子化で国内の紙需要が減少するなか、環境分野で事業拡大を狙う。(中略)

中間処理施設では廃プラスチックを破砕して再生樹脂原料を製造。再生樹脂は排水パイプなどをつくる加工業者向けに販売する。もた、企業や自治体から機密性の高い文書を回収・溶解して製紙原料の古紙パルプを製造する。廃プラスチックや木くずから固形燃料(RPF)もつくる。古紙パルプや固形燃料は近隣の製紙工場に売却する。

運営会社は廃棄物の処理収入や固形燃料の販売収入で13年度に売上高20億円を目指す。

(H21.2.23 日経)


原発稼働率9割に向上

― 自民が基本法素案 10年で欧米並みに ―

温暖化ガス排出削減に向けて自民党が検討している「低炭素社会づくり推進基本法」(仮称)の素案が10日、明らかになった。10年間を排出削減の「特別行動期間」と明記。原子力発電所の稼働率を現在の6割から欧米並みの約9割に上げる目標を掲げるとともに、太陽光発電など自然エネルギーの一定価格での購入を電力会社に義務づける制度の導入を盛った。今国会に議員立法での提出を目指す。

次期衆院選を控え与野党は対決色を強めているが、民主党が昨年提出した地球温暖化対策基本法案は自然エネルギーの購入制度など自民党案と重なる部分が多く、協調を探る動きが出る可能性がある。

原発稼働率で政府が具体的な数値を念頭に置いた目標を決めたことはない。基本法への明記で官民の取り組みが事実上、義務づけられる。9割への引き上げによる温暖化ガス削減量は、2007年度の国内排出量の6%強にあたる9千万トンに達すると見られる。

自然エネルギーの買い取りの義務付けで自然エネルギーを使って発電する事業者などが投資回収を見込みやすくなる。石炭火力発電所の温暖化ガス排出削減に向け、稼働中の設備の建て替えや改修を進める方針も明記。二酸化炭素を回収してため込む装置などの導入義務付けにも視野に入れる。

(H21.2.11 日経)


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