環境トピックス

CO2削減社会

― 新しい削減計画 ―



鳩山由紀夫首相は国連気象変動首脳会合(気候変動サミット)で、日本の2020年の温暖化ガス削減の中期目標として1990年比25%削減を表明した。25%のうち「真水」の国内削減分はどの程度で、海外クレジット(排出枠)の調達がどの程度になるのか。その割合次第で日本の国民負担と産業界の削減コスト、将来の成長の見取り図が大きく影響を受ける。

国内での削減と海外クレジットはともに利点と欠点がある。国内での削減コストは高いが、技術開発や新産業創造につながる可能性もある。海外クレジットは削減コストは安いものの、日本の産業界の競争力向上には結びつきにくい。

麻生太郎前首相は05年比15%減を「真水」で達成するとした。これは90年比にすると約8%減にすぎない。民主党中心の新政権はこれを増やすのは間違いないだろう。仮に国内で90年比15%減を達成し、残り10%分を海外クレジットの利用と考える。07年実績は90年比9%増なので、目標達成には国内外で34%分の削減が必要となり、国内削減は24%分となる。

国内では20年までに07年比で約3億トンの削減が必要で、ならすと毎年約2300万トンの削減を上積みしなければならない計算となる。これまでの05年比15%減の計画に比べ、国内削減分は約2倍に膨らむ。さらに海外クレジットは20年時点で年約1億3千万トンが必要になる。

現時点では鳩山政権が国内削減と海外クレジットをどう配分するかははっきりしない。国内削減分を決めるには、多様な要素を考慮しなければならない。省エネなどの技術開発では一定のリードタイムが必要で、新製品が開発されても市場に普及するには時間がかかるだろう。どの技術を優先的に導入するかを選ぶ必要があり、エコポイントなど効果的な誘導政策も検討しなければならない。国民の費用負担についても十分な検討が必要である。そうは言っても20年は遠い先ではなく、間近である。迅速な削減計画の策定が求められる。

(H21.10.2 日経)

印刷用ページ 

ページトップへ