環境トピックス

企業が森林整備

― CO2吸収量 自治体が認証 ―



南関東の自治体と企業が協力して森林を整備する取り組みが進化し始めた。企業が整備した森林が吸収する二酸化炭素(CO2)量を自治体が認証するほか、埼玉県は排出量取引に森林吸収分を組み込む仕組みを検討中。企業は「環境にやさしい」イメージだけでなく、具体的なCO2削減量を示せるようになる。参加企業が増えれば財政難に悩む自治体にも効果は大きくなりそうだ。

千葉県は8月、企業などが手入れした森林が吸収するCO2量を認証する制度を始めた。9月末の第1回の認証では、千葉銀行と富士ゼロックス千葉、千葉県木材振興協会にそれぞれ吸収量を認証した。

千葉県富津市に広がる鬼泪山県有林。千葉銀は6年前から、県有林の一角にある2ヘクタールの土地で森林整備に取り組んでいる。ヒノキを植え、夏には行員がボランティアで下草刈りや枝切りに携わっている。

同行は県が2002年に設けた「法人の森」制度に基づいて県と契約し森づくりを進めてきた。延べ1000人の行員らが参加した。「株主総会で『株主優待で植林の権利がほしい』と聞かれるなど関心が高まっている」と担当者は手ごたえを語る。「将来は貯金の一部を植樹に役立てる環境定期の商品化などにつなげたい」と話す。

同様の制度は神奈川県でも始まっている。県はアサヒビールなど6社・団体と契約し森林の手入れに力を借りており、10年春以降、吸収量を企業に示す計画だ。東京都も企業が整備した森林のCO2吸収量を承認する計画で、11月にも検討委員会を始める。2,3年後をめどに運用を始めたいという。

自治体が企業の力を借りる背景には深刻な財政難がある。千葉県の08年度の森林予算は34億円で、10年前の3分の1に。「財政状況が厳しく整備に十分な予算を割くことが難しい。

県土の4割を森が占める神奈川県は07年、必要な財源を得るための新税を導入。初年度こそ森林予算は約46億円と前年度より5割増えたが、09年度は景気低迷で42億円弱にとどまる。

企業は自治体の取り組みに加わることで地域貢献や環境への配慮といったイメージアップにつなげられる。双方にメリットがあるだけにこうした取り組みは大きく広がった。1都3県は合せて40超の企業や団体と契約。特に埼玉県は三菱UFJ信託銀行、ヤオコーなど20社・団体と協定を締結しており、整備面積は270ヘクタールに達する。

京急百貨店は5月、水源林の整備費を5年間負担する契約を横浜市と結んだ。同店はCO2を環境活動で相殺する付加価値が売りの中元や歳暮用のギフトを販売している。今後は森が吸収するCO2もギフトに利用する予定だ。

自治体が吸収量の承認を始めたのは、森林整備への関心をさらに高めて企業の参加を促すためだ。イメージだけではなく数値を「見える化」して企業の参加意欲を高める。実際、千葉銀は植林などの活動を通じて35トンの認証を受けた。

吸収量の認証からもう一歩踏み込もうという動きもある。埼玉県は11年度にも、企業にCO2の排出枠を設定して余剰分と不足分を売買する排出量取引制度を独自に創設する方針だ。(後略)

(H21.10.10 日経)

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