環境トピックス

  

ペットボトルのリサイクル

― 自治体の独自処理 停滞 ―

家庭から出る使用済みペットボトル(廃ペット)のリサイクル推進で首都圏の自治体が足踏みを余儀なくされている。景気後退で廃ペットの主たる輸出先である中国の引き合いが停止。引き取り価格が暴落し、独自に業者に処理を委託してきた自治体では引き取り拒否に直面する事態が生じている。(中略)市場原理にゆだねてきたリサイクル体制は見直しを迫られている。

東京都港区は2009年度から、年間に回収するペットボトル約千トンを政府の指定法人である「日本容器包装リサイクル協会」を通じて処理する方針に転換した。(中略)

国内の廃ペットは、政府の推計では07年度に市区町村が回収した年間28万トンの廃ペットのうち、中国などに輸出されるのは4万トン弱だが、「実際にはもっと多い」(リサイクル業者)。昨年度前半までは業者は市町村から廃ペットを1トン4万〜5万円台で引き取ったが、昨年10月後半に相場が暴落、買い手がつかなくなった。

千葉県袖ケ浦市は年間に回収する百トン超の半分について、昨年11月、廃ペット市場の低迷を理由に業者が年度途中での契約解除を申し入れた。12月に別の業者と契約し直したが、販売価格は最初の業者と決めていた1トン5万3千円から3千5百円へと急落した。

処理できない自治体が相次ぐことを懸念し政府は、緊急措置として容リ協に追加入札を依頼。34自治体が昨年末に申し込んだ平均落札結果は1トンがマイナス1千円。自治体はリサイクル業者にゼロ円で引き取ってもらうことになった。

年間約1万2千トンを回収する横浜市も追加入札に参加。06年度から回収量の9割を入札で民間リサイクル業者に引き渡してきたが、09年度は全量を容リ協に出すことを決めた。埼玉県上尾市も年間6百トンの処理を09年度から容リ協に全面委託する。従来は、半分は民間リサイクル業者に処理を委託。07年度はリサイクル収入が約1千3百万円あった。(中略)

一方、あくまで独自ルートにこだわる自治体もある。東京都足立区は回収した廃ペットのリサイクルをペットリファインテクノロジー(川崎)に委託する。同社は廃ペットをボトル原料樹脂に再生する。廃ペットの相場高騰で二度も経営破綻し、昨年10月にボトル製造大手の東洋製缶の子会社として再出発した。足立区の定野司環境部長は「廃ペットはボトルに戻さないと本物のリサイクルとはいえない。国も自治体もリサイクル産業を支えないといけない」と主張する。(後略)

(H21.3.28 日経)


離島で太陽光・風力発電

― 島内需要の4分の1賄う ―

九州電力は離島で蓄電池付きの太陽光と風力発電設備の設置に乗り出す。電力需要の少ない離島では今まで小型石油火力発電機で電力を供給しており、燃料費の負担が大きかった。豊富な自然エネルギーを使い、燃料の利用を減らす。

第一弾として2009年度中に、鹿児島県のある離島に出力約50キロワットの太陽光発電、同約5キロワットの風力発電とリチウムイオン電池を組み合わせた設備を設ける。投資額は約3億円。一部に政府の補助金を使う。島内の最大電力需要の約4分の1を賄えるという。(中略)

1年間試験運用し、コスト削減につながると判断すればほかの離島にも展開する。将来は火力発電の燃料もバイオディーゼル燃料など植物由来に転換し、離党の二酸化炭素(CO2)排出ゼロを目指す。

離島での発電は少量の石油燃料を運搬するため、一般家庭への電力販売価格が1キロワット時あたり20円強なのに対し、発電コストは同百円以上と大幅赤字が続いている。九電は鹿児島や長崎などに多くの離島を抱え、小規模な石油火力発電所は35ヶ所に及ぶ。

(H21.3.28 日経)


温暖化ガス削減中期目標

― 政府検討委、6月メド ―

政府は27日、首相直轄の地球温暖化問題に関する懇談会の中期目標検討委員会(座長・福井俊彦前日銀総裁)を開き、2020年時点の温暖化ガス排出削減の中期目標案を公表した。1990年比4%増から25%減の5案を提示し、家計や国内総生産(GDP)への影響を併記。政府は国際交渉や国内世論を見極めながら目標の絞り込みに着手するが、景気の急速な悪化もあり、6月の目標決定では難しい判断を迫られる。

5案は90年比4%増横ばいから3%減7%減15〜16%減25%減。△鮟く4案には達成のための具体策や経済への影響を併記した。△論菴聞饒澗里25%減らす条件で、削減コストをほかの先進国と同額にしたケースを計算したため、具体策などは示されていない。

GDPへの影響は20年までの累積で0〜6%押し下げると試算。単純計算だと年率最大0.5%程度下押しする。失業率は20年時点で最大1.9%上昇し、家庭の光熱費支出も14万円増える。(中略)

中期目標案がほぼ出そろったことで、政府は今後、選択肢の絞り込みを本格化させる。閣僚による国民との対話集会やパブリックコメントを通じ、温暖化対策の重要性やそれに伴う負担を説明、国民の意見を目標決定に反映させる考えだ。

政府内では7%減と15〜16%減の2案の実現可能性が高いとの声が多い。4%増では国際交渉でほか国・地域から批判されるのは確実で、25%減では経済への負担が大きすぎるためだ。温暖化対策で世界を主導する狙いから、踏み込んだ目標を掲げたい考えだが、最近の景気低迷を考慮すれば、過度な負担を家庭や企業には求めにくいのが現状だ。(後略)

(H21.3.28 日経)


温暖化ガスの削減目標審査

― 企業間の排出枠取引 今夏に本格化 −

国内排出量取引制度の施行で、企業などが自主設定した2008年度の温暖化ガスの排出削減目標の審査結果が分かった。政府の審査に通ったのは、電力や鉄鋼など主要な73社・団体で、5社・団体が目標が基準に満たず、目標を取り下げた。具体的な排出削減目標が決まったことで、企業間での排出枠の取引が今夏に本格的に始まる見通しだ。

政府が26日に開く、首相直轄の地球温暖化問題に関する懇談会の政策手法分科会(座長・森島昭夫地球環境戦略研究機関特別研究顧問)で公表する。

排出量取引の試行は、昨年10月に参加企業を募集し始めた。企業は原則、自主的に排出削減目標を決める。ただ、甘い目標設定をすれば、排出枠の売り手が増えてしまうため、政府は企業が過去の実績より厳しい目標にすることなどを基準にして審査を進めてきた。

この結果、電力やセメントのほか、製紙や商社などの主要企業73社・団体が審査を通過。この中には業界団体として参加申請していた鉄鋼や自動車業界も含まれる。審査は公表直前まで続くため、最終的には数社増える可能性もある。一方、化学や石油精製などの5社・団体は政府の審査で目標設定が甘いなど基準を満たさなかったため、目標を取り下げた。

(H21.3.26 日経)


チェコから排出枠4000万トン

― 政府最終調整1億トン取得計画にメド ―

政府はチェコ政府から温暖化ガスの排出枠4千万トンを購入する方向で最終調整に入った。

すでに合意したウクライナからの購入分などを合わせて、京都議定書が課す排出削減義務のうち、政府が計画する1億トンの取得分をほぼ達成することになる。経済・金融危機の影響で排出枠価格が大幅に下がっており、取得コストを抑えられと判断。計画を前倒しして大規模な買い取りに踏み切る。(中略)

取得額は明らかにしないもようだが、市場価格から推定して5百億円前後とみられる。日本はチェコ政府から複数年にわたって排出枠を受け取る。

京都議定書は日本に温暖化ガスの排出を2008〜12年の5年間で、1990年比6%を減らすよう求めている。政府はそのうち0.6%分を企業の省エネなどの自助努力で、3.8%分を森林による吸収で、1.6%分を海外からの排出枠購入で達成する計画を立てている。

(H21.3.25 日経)


ページトップへ